【モニュメント探訪】さあ、はな子像に集合しよう

はじめに

この記事では吉祥寺の駅前にある「はな子像」について取り上げる。

2022年現在、吉祥寺駅北口の駅前広場で多くの人の集合場所として活躍している「はな子像」だが、実は設置されたのはつい5年前の2017年5月5日のことだった。井の頭自然文化園のアジアゾウ・はな子が2016年5月26日に69歳でこの世を去ったことを受けて設置することになった。設置に当たっては地域の方々や市などによりできた吉祥寺「はな子」像設置実行委員会が中心となって活動した。その際の資金は市民だけでなく日本全国からの募金によって賄われたそうだ。

そんな、市民だけでなく日本全国の人に愛された「はな子」や「はな子像」について記述していく。

戦後初めてきたゾウ「はな子」

はな子は戦後初めて日本に来たゾウで、最初は上野にある恩賜上野動物園に2歳半の時にきた。そして、7歳の時に井の頭自然文化園に引っ越してきた。

「殺人ゾウ」というレッテル

はな子の井の頭自然文化園での生活は決して順風満帆なものではなかった。井の頭自然文化園にきてから2年目、9歳のときに、深夜、酔ってゾウ舎に忍び込んだ男性を踏んで死なせてしまったのだ。そのことからはな子は一時期鎖で繋がれてしまうこととなった。また、鎖につながれていたはな子は、13歳のとき、今度は飼育係の男性を踏み殺してしまった。

はな子のこういった事故は、新聞にも大きく取り上げられた。実は二度とも人間の不注意から起きた事故だったようだが、はな子は「殺人ゾウ」としてのレッテルを貼られ、暗いゾウ舎の中で鎖で繋がれる生活を送ることになってしまった。

はな子は鎖に繋がれた精神的負担から、食事を十分に取ることができなくなり、痩せ細ってしまった。

飼育員山川さんとの思い出

はな子が鎖に繋がれて1ヶ月が経った時、山川さんという飼育員が井の頭自然文化園にきた。山川さんは人間への敵意をむき出しにギラギラと睨み付けてくるはな子に対し、決してひるむことはなかったという。そして、着任してわずか4日後には、はな子の鎖を外し、そこからまさにつきっきりで世話を始めたのだ。

山川さんの仕事ははな子だけではなかったが、山川さんは他の動物の世話が終わると休憩も取らず、すぐにはな子の元に戻ってきてはな子に触れ、話しかけたのだった。

そんな山川さんの献身的な世話によってはな子は次第に心を開いていき、山川さんの手を舐めるようにまでなった。しかし、1ヶ月間鎖に繋がれて、閉じてしまったはな子の心はここまで開くのにおよそ6年の月日が必要だったという。

山川さんは、定年を迎えるまでの30年間、ひと時も離れずはな子に寄り添った。自分の身体が、がんという病に蝕まれていることにも気づかずに。そして定年から5年後、山川さんはこの世を去ってしまった。

はな子、死す

2016年5月26日に69歳ではな子は亡くなった。以下がはな子が亡くなった日のはな子の詳細である。

8:30 ゾウ舎室内で「はな子」が横臥していた(夜間監視ビデオで確認したところ、1時25分頃、横臥状態となった模様)

10:45 横臥したままだと内臓を圧迫して死亡してしまうので、上野動物園・多摩動物公園の飼育職員の応援も受け、ロープなどにより起立させるべく作業を開始

15:04 死亡を確認

解剖をおこなった結果、死因は、継続的な横臥で肺のうっ血を引き起こしたことによる呼吸不全と判明した。

はな子は2013年に66歳で国内最高齢記録を更新していたため、大往生であったろう。

はな子の死亡はニュースでも取り上げられ、2800人ほどの人が献花をしに来た。

ゾウの「はな子」死ぬ 国内最高齢の69歳(16/05/26)
ゾウの「はな子」お別れ会 3000人近くが献花に(16/09/04)

像設立とその反響

はな子の思い出を後世に残すため、吉祥寺「はな子」像設置実行委員会(委員:武蔵野市、武蔵野商工会議所、武蔵野市商店会連合会、吉祥寺活性化協議会、井の頭自然文化園、一般財団法人武蔵野市開発公社)が、吉祥寺駅北口に「はな子」の銅像をつくろうと設置された。

原型をつくるのは、井の頭自然文化園でも作品展を開催したことのある美術作家の笛田亜希さん。小さいころから井の頭自然文化園に通い、はな子とともに成長してきたそうだ。笛田さんによれば、50代くらいのはな子をイメージして製作したそうだ。

像は無事完成し、2017年の5月5日に像の除幕式が行われた。その様子は地域のメディア「週刊吉祥寺」でも取り上げられていた。

終わりに

はな子は、時には「殺人ゾウ」というレッテルを貼られてしまうなどの苦難もあったが最終的には市民に愛され、像が作られた。60年ほど吉祥寺で生活してきたはな子は死んだ後も像となって市民を見守っているのだ。そして、現在吉祥寺を訪れる人びとは、今もまたはな子のもとに集合してきている。さぁ、はな子像に集合しよう。

・東京ズーネット(https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ino&link_num=23936

参考URL

アジアゾウのはな子の銅像(どうぞう)ができました|武蔵野市公式ホームページ
さようなら、アジアゾウ「はな子」 | 東京ズーネット
【旅探/たびたん】「はな子」のストーリー(井の頭自然文化園)
週刊きちじょうじ 2017/5/12発行(はな子の除幕式が5/5)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です