【モニュメント探訪】武蔵野の巨匠 彫刻家・小畠廣志
文責:江口善宣
みなさんは、小畠廣志さんをご存知でしょうか。小畠廣志さんは武蔵野市ゆかりの彫刻家で、市内には小畠さんの彫刻が多数存在しています。本記事では、小畠さんの人生と武蔵野市に点在するモニュメントについて紹介します。
彫刻の情報を収集するにあたり、ご子息である小畠刻時さんにご協力いただきました。
【目次】
1. 小畠廣志を知る。
2. 小畠さんの作品はどこにある!?小畠廣志作品マップ
3. これも小畠さんの作品!? 小畠廣志作品ギャラリー(in武蔵野市)
参考資料
1. 小畠廣志を知る。
小畠廣志さんは、武蔵野市吉祥寺本町生まれの彫刻家です。東京藝術大学を卒業後、彫刻制作の傍ら美学校などで教鞭をとりました。1980年にはKOBATAKE彫刻工房を開校し、後進の育成に努めました。
武蔵野市にも多くの作品を残しており、吉祥寺の近鉄百貨店(現ヨドバシカメラ吉祥寺)のシンボルであった「ユニコーン」像も小畠さんによるものです。
2019年には武蔵野市立吉祥寺美術館にて企画展「小畠廣志 木に呼ばれる」が開催されました。市立美術館のHPには以下のように紹介されています。
小畠廣志(こばたけ・ひろし 1935-1996)は吉祥寺ゆかりの彫刻家です。母の鼎子は青龍社の日本画家、父の辰之助は洋画家にしてモダンな自由人。創造性に富んだ家庭において、彫刻家・廣志の素地はつくられました。
東京藝術大学美術学部彫刻科(菊池一雄教室)に学んだ廣志は、1959年に初出品した二科展で特選を受賞します。冴えた造形はその後も多方面から高く評価され、1977年には第6回平櫛田中賞に選ばれています。いっぽうで、東海大学、青山学院女子短期大学、美学校ほかで教鞭をとるなど、年若い時分から後進育成にも力を注ぎます。1980年には美学校から独立してKOBATAKE彫刻工房を開校。技術的教授にとどまらず、芸術家としての人間を育む、独自のカリキュラムを展開しました。
さまざまな素材による彫塑から鋳造まで、すべてを自らの手でおこない、1980年代からはリトグラフなどの版画表現にも取り組んだ廣志ですが、彼の造形の基軸は木彫にあったといえるでしょう。塑造や鋳込みといった、彫りとは成立のしかたが異なる表現の存在は、彼の木彫にいっそう豊かな幅をもたせ、得がたい魅力と存在感を増すことにもつながりました。
廣志の作品の多くは人間の姿をあらわしていますが、それは、人間の形体美を具体化したものではありません。作品を前にした者の深層へ呼びかけるための、廣志のフォルムなのです。「材を見て、じかにその素材にフォルムを見付け、その中に時分の形体を入れていくとき、確かに木に呼ばれていく自分があることを感じます」と彼はいいます。作品をつくるという行為がもつ社会的責任をつねに意識していた廣志。彼は、原木と向かいあうなかで見いだし彫りだしたフォルムが、原木よりもはるかに大きな存在となることをめざしつつ、制作にのぞみました。
(武蔵野市立吉祥寺美術館HP http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2019/06/post-175.htmlより)
2. 小畠さんの作品はどこにある!?小畠廣志作品マップ
小畠さんの作品だけをピックアップして地図に「見える化」してみました。
3. これも小畠さんの作品!?小畠廣志作品ギャラリー(in武蔵野市)
街中で偶然発見したモニュメントをみるとき、作者に注目することは案外少ないかもしれません。しかし、日頃何気なく見ているモニュメントが、実は同じ作者によって作られていたということがわかったら面白いですよね。武蔵野市でそのような面白さを最も味わいやすいともいえるのが小畠廣志さんの作品なんです。
マップを見てもわかる通り、小畠さんの作品は武蔵野市に少なくとも5つ存在します。本章では、その5つについて調査でわかった情報を掲載します。
3-1「勝利」
<概要>
・設置年:1958年
・設置場所:武蔵野市営グラウンド前庭(現在総合体育館前に移設)
・本小松石製
3-2 「花の精」
<概要>
・設置年:1974年
・設置場所:吉祥寺 井の頭ビル1階
・ブロンズ製
3-3 「家族」
<概要>
・設置年:1987年
・設置場所:武蔵野市立保健センター 壁面レリーフ
・ブロンズ製
3-4 「こども平和像」
<概要>
・設置年:1990年
・設置場所:武蔵野市立武蔵野総合体育館前
・ブロンズ製
・像の解説板には次のような説明が書かれています。
初代のこども平和像は、昭和45年11月に旧市営陸上競技場の正門前に建てられました。
三鷹駅前に建立された北村西望先生作の世界連邦平和像にあわせ、世界の恒久平和と人類永遠の繁栄を願い当時の第四中学校を中心とした小中学校のこどもたちの手により石膏で制作した作品でありました。
その後、総合体育館建設にあたって、こども平和像の移築が検討されましたが、20年近くも風雨に晒され損傷が激しいということで平成元年3月に取り壊されました。
旧こども平和像にかえて、当時の平和を願う気持ちを大切にするため、平成2年、武蔵野市世界連邦宣言30周年を記念して新しいこども平和像をつくることにいたしました。
武蔵野市出身の彫刻家小畠廣志氏に制作を依頼し、改めてここ武蔵野の面影を残す林に建立したものです。
この像は体高約2メートル、重量約1トン、銅合金の鋳物製で、台座は直径約2メートルの大島石でできています。
平成2年11月17日 武蔵野市
3-5 「花」
<概要>
・設置年:1991年
・設置場所:けやきコミュニティセンター
・ブロンズ製
・像の解説板には次のような説明が書かれています。
彫刻「花」は、武蔵野市のゴミ問題を考える連絡会の長年に亘る熱い想いの結晶です。武蔵野市出身の彫刻家・小畠廣志氏に寄贈して頂きました。
1991年5月12日 けやきコミュニティ協議会
4. 参考資料
武蔵野市立吉祥寺美術館HPより
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2019/06/post-175.html
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