武蔵野市国際オルガンコンクールを育ててきた人々<番外編>〜武蔵野市民文化会館訪問記〜

 武蔵野文化事業団の和田能さんへのインタビュー後、武蔵野市民文化会館小ホールにあるパイプオルガンを見せていただきました。(別記事「武蔵野市国際オルガンコンクールを育ててきた人々〜武蔵野文化事業団編〜」も併せてお読みください)

JR三鷹駅の北口から歩くこと13分、住宅街の中に武蔵野市民文化会館は現れます。

 そんな日常・生活空間から、建物に一歩足を踏み入れると、ホールへと続く大階段と大きなシャンデリアがお出迎え。晴れやかで特別な別世界に来たような心持ちになり、これから見る公演などへの期待感も自ずと高まりそうです。ちなみにこのシャンデリアは、年末に職員総出で掃除をするのが毎年の恒例行事だそう。途方もない作業になりそうですね……。パイプオルガンがある小ホール(客席数425席)は、階段を上って左手にあります。

 例のパイプオルガンがこちら。なんともクールで風格のある佇まい。幼い頃からディズニー映画に親しんできた筆者としては、『美女と野獣 ベルの素敵なプレゼント』に登場するパイプオルガンのキャラクター・フォルテを真っ先に思い出してしまいました(笑)。わからない人はぜひ映画も観てみてください。
 パイプオルガンが設置されている小ホールは、残響が長く、豊かな響きに定評のある音楽専用ホールです。オルガンのほか、器楽・声楽、室内楽などのクラシック音楽の公演が数多く行なわれています。プロの公演だけでなく、ピアノ教室の発表会や、合唱のコンサートなどでも使用されています。

 武蔵野文化事業団の園田さん(左)からパイプオルガンの説明を受ける筆者(右)。実際に目の前に立ってみると、いかに大きな楽器であるかがよくわかります。デンマークのオルガン製作会社でつくられたこのオルガンは、高さ9.3m、幅5.5m、奥行2.3mもあり、パイプの本数は合計2,780本もあります。

 オルガンの内部も少しだけ見せていただけました。鍵盤の動作を伝える「トラッカー」と呼ばれる無数の棒状の機構などが見えます。この写真の上の階層には大小様々なパイプが並んでいます。普段は決して見ることのできない貴重な一枚ですね。なお、メンテナンスは年に4回程度実施されています。

 肝心の演奏台がこちら。手で弾く鍵盤が3段(下から順に第1手鍵盤、第2手鍵盤、第3手鍵盤といいます)と、足で演奏する鍵盤が1段あります。鍵盤横の壁面にワインセラーのごとく並んでいる「ストップ(音栓)」と呼ばれる栓を引くことで、音色を自在に変化させることができます。第1手鍵盤は下の方にあるパイプと、第2手鍵盤は真ん中にあるパイプと、そして第3手鍵盤は上の方にあるパイプと、それぞれ繋がっています。それゆえ、例えば上方のパイプから音が鳴る第3手鍵盤は、天から降ってくる音楽を奏でたいときに用いたり、逆に下方のパイプから音が鳴る第1手鍵盤は荘厳な音楽を奏でたいときに用いたりと、曲調に応じて鍵盤を使い分けているのだそうです。弾きこなすのは並大抵のことではなさそうですね……。

 5歳からピアノを習っていた筆者。せっかくの機会なので少しだけ弾かせていただきました。弾いた瞬間、荘厳な音が全身にぶつかってくるのを感じました。ストップの組み合わせ次第で色々な音が奏でられるので、まるで巨大な電子ピアノを弾いているかのような感覚です。弦を弾くことで音が出るピアノとは異なり、パイプに風を通すことで音が出るパイプオルガンは、原理的に音量調節ができません(ただし、風を送るパイプの本数を増やせば音量は大きくなります)。そのため、鍵盤に少し触れただけでも大きな音が出てしまいます。ほんのちょっとのミスタッチも許されませんね……(笑)。

 ところで、小ホールへ向かう廊下にこんなものを見つけました。写真だとわかりにくいですが、壁をくり抜いたスペースに、武蔵野市国際オルガンコンクールの沿革の説明パネルが設置されているのです。実はこのスペース、かつて公衆電話が置かれていたのだとか。有効活用されていますね!

 最後に大ホールも少しだけ見学させていただきました。客席数は1,252席。客席前部はオーケストラピットとしても利用できます。大ホールではオーケストラや、オペラ、ミュージカル、バレエなどの公演が行われるほか、成人式などの大規模イベントも催されます。また、コロナ禍の現在は、これまで別の小ぶりな施設でおこなってきた落語などの公演を、客席の広さを生かして、大ホールで1席おきの配席にして開催しているそうです。

 小ホール、大ホールいずれも素敵なホールでした。みなさんもぜひ武蔵野市民文化会館での公演やイベントに足を運んでみてはいかがでしょうか?

見学日 :2021年2月12日(金)
見学場所:武蔵野市民文化会館
写真撮影:金成めい、伊達摩彦
文責  :伊達摩彦