モニュメント×草むしりーー武蔵境駅北口、2022年2月25日
0(イントロ)
2022年2月25日(金)の午前10時、武蔵境駅北口のとある銅像に小林ゼミのメンバーが徐々に集まってきました。
その目的は、そう「草むしり」。
目次
1 企画概要
2 草むしり劇的ビフォーアフター
3 この銅像に名前をつけてくれませんか
4 タイトルと作者が判明
5 最後に
6 余談
1 企画概要
武蔵境駅北口(下地図の赤丸の位置)には、シルクハットを片手に自転車を押す紳士の銅像が設置されています。市役所の方の話によれば、これはかつて武蔵境駅北口駐輪場に設置されていたモニュメントで、駐輪場の撤去にともない現在の場所に移設されたとのこと。
しかし、銅像の周辺は草が生い茂った、見るに堪えない状態。
「果たしてここを通る人たちはこの銅像に意識を向けたことがあるのだろうか」
モニュメント調査を通してこの銅像を知った私たちはそんな疑問を持ち、銅像の周りを綺麗にする「草むしり」という行為を通して、改めて銅像に関心を持ってもらえないかと考えました。
また、この銅像の前には紹介パネルが置かれていますが、銅像の名前は書いてありません。そこで、銅像に「名前を付ける」、そして今まで気にも留めなかった銅像と一緒に「記念写真」を撮ることで、銅像に愛着や思い出を持ってもらうことも目指しました。
この記事では、当日の様子を映像と写真、文章で紹介します。
あなたの街にも、実はたくさんのモニュメントがあるはず。そして、日常生活でたくさんのモニュメントを目にしているはず。
草むしりを目にした市民の皆さんには、どんな思いが生まれるのでしょうか。この記録を見たあなたは、何を思うのでしょうか。
2 草むしり劇的ビフォーアフター
軍手をして、ひたすら草を抜きました。中には枯れてから長時間経っていたのか、触るだけで抜けてしまうものも。それでも、4〜5人で1時間程度作業した段階で銅像の周辺はおおかた綺麗になりました。ゴミ拾いや片付けも含め、活動は3時間で終了しました。
草を抜いている最中、その前を通りがかる方からは不思議そうな視線を向けられました。これは「関心」を抱いていただけたと言えるでしょうか。
3 この銅像に名前をつけてくれませんか?
草むしりが行われている手前で行った、通りがかった人に銅像の名前をつけてもらう企画。
名前はスケッチブックに書いてもらい、銅像と一緒に記念撮影。撮った写真はこちらのInstagramにまとめて掲載してあるのでぜひご覧ください。
4 タイトルと作者が判明
銅像周辺の草が徐々に無くなり、銅像に近づけるようになると、銅像の台座や背面にタイトルと作者の名前が書かれていることが判明。
紹介パネルではわからなかった情報が、突然わかった瞬間でした。
判明した名前は「ここからアンダンテ」。
アンダンテとは、音楽の速度標語。アダージョとモデラートの間のテンポで、「歩くような速さで」を意味します。
作者は赤川政由(あかがわ・まさよし)さんで、制作は赤川さんのBONZE工房、制作年は1992年であることも判明。赤川さんは立川の工房を拠点に活動する銅板造形作家で、全国のさまざまな公共空間に作品を提供しています。
この銅像は当初は駐輪場に設置されていたため、この銅像より先では自転車を降りて歩きましょう、というメッセージを伝える役割があることも後に知ることになります(参考1)。
※参考1:http://www.asahi-net.or.jp/~pj4m-akgw/gallery/images_gallery/02_andante_from_here.html(2022/03/10閲覧)
また、この銅像の前には紹介パネルが設置されています(下画像の中央)。
案内パネルにはこんな内容が。
シルクハットを持ち口ひげをはやしたクラシカルな姿の老紳士。ハットをちょっと持ち上げ小粋に挨拶してくれます。
朝は「いってらっしゃい。今日も1日頑張るんだよ。」
夕方は「お帰り。1日ご苦労様。」
私たちを元気づけてくれているようです。
さらに、上に貼られた追加のパネルには以下のように続きます。
このモニュメントは、1992年にこの場所にあった駐輪場前に設置されていたもので、今回武蔵境駅北口整備完了に合わせて再設置しています。
しかし、とあるウェブサイト(参考2)によれば、この追加パネルの下にはこのような文章が続いていたようです。
私たちも紳士のように正装まではしなくとも、駐輪場をきれいに使用することで、紳士の気持ちに答えてみてはどうでしょう?
※参考2:https://www.nerimacity.com/diary/50.html
それは、設置場所が駐輪場ではなくなってしまったため、再設置の説明で隠されてしまったメッセージでした。
5 最後に
草むしりをしていると、物珍しそうに遠くから眺める人、何も見ていないかのように通り過ぎる人、声をかけてくれる人、ポイ捨てを思いとどまる人など、さまざまな人がいました。そこに銅像があることに初めて気が付いた人もたくさんいたのではないでしょうか。
名付けをしてくれた小さなお子さんとのベンチでの交流や、「意外とハイカラな銅像なのね」と話しかけてくださる通行人との会話は、ささやかながら楽しい時間でした。
一方でこの銅像は、当初の設置意図(駐輪場のモニュメント)からはすでに離れてしまっています。歩道からの距離があり、歩道と銅像の間の花壇は特別な整備がされているわけではないので、草が生えれば銅像は簡単に隠れてしまいます。紹介パネルも歩道から離れていて覗き込みづらい状態です。
さらに、たった1回の草むしりで草だけでなく大量のゴミも出てきました(余談参照)。季節が変わればまた草が生え、この銅像を再び隠すことになるでしょう。
街中のモニュメントは地域のシンボルや日常生活の1コマになり得るものです。その一方で、「設置されたらそれで終わり」という訳にはいかないこともまた事実。
この記録を通して、みなさんはどう考えますか。
6 余談
6-1 ペダルが回ることが判明
銅像に近づいてみると、ペダルを回せることに気がつきました。
かつて駐輪場に設置されていた時は、銅像に近づいてペダルを回してみる人もいたのでしょうか。
6-2 ゴミがたくさん発掘される
銅像周辺の雑草が徐々に無くなると、そこに現れたのはたくさんのゴミ。
特に多かったのはカップ酒のゴミで、そのほかにも缶のゴミ、大量のタバコの吸い殻、スケートボードなど、さまざまなゴミがありました。
どれも意図的に捨てられたもので間違いなさそうでした。